なりゆきの旅立ち。

【Luigi Side】

 

 突然決まってしまった、僕の双子の兄さん・マリオの旅立ち。
 兄さん、いつも言ってるんだよねえ。「体をはって戦うのは俺だけでいい。お前は何も心配しなくていいから」ってさ。失礼だなあ、一応僕だってちゃんと戦えるんだよ! ……怖いけど、ね。
 まあ、こんな話は今度でいいとして。僕、ルイージは、キノコ城の中にある滑走路の入り口で、兄さんを待っていたんだ。
 本来なら、ここは姫の自家用機があるんだけど……今は、クッパのカメジェットに占領されてる。いつも乗ってるピエロみたいな船といい、クッパって……美的感覚あんまり良くないよね?
 ……あ、来た来た! 兄さんだ。
「よう、ルイージ!」
 城にいるキノピオたちに挨拶してきたらしい。旅立ちの準備もばっちりみたいだ。
「クッパ、もう滑走路のほうに行ってるよ」
「お、そうか。じゃあ早く行かないとな」
 ふたりで滑走路のほうに向かって歩き出す。あ、ここにもキノピオたちがいるね。
 兄さんの姿を見るや否や、嬉しそうに話しかけてきた。やっぱり兄さんは人気者だねえ。
「ついこの間、マメーリア王国に旅行をしてきたの。ウフフな山に、ゲラゲラな森に、クスクスな海にデヘヘな砂漠と、見どころ満載な国だったわ!」
「……何だそりゃ。訳分からん」
「ホントに自然にあふれた国なんだねえ」
「突っ込むところ違うだろ……」
「マリオ殿ーーー!」
 急に後ろから、ものすごい大声で話しかけられて。
 びっくりして振り向くと、茶色いスーツケースに乗って、こっちに向かって全力疾走して来るキノピオの姿があった。
 あれは……ピーチ姫に仕える大臣、キノじいだね。
 僕たちの前で止まったキノじいは、乗っていたスーツケースから飛び降りて、「なんとか間に合ったようですな」って言って、どこかほっとしたように笑った。
「マリオ殿のために、長旅にもってこいのスーツケースを用意致しましたぞ! アイテムや着替えが沢山入れられて、とーっても便利! 持って行って下され」
 わあすごい! きっと新品なんだろう、どこもかしこも磨いたみたいにピカピカだあ。
「おお、サンキュー!」
「よかったね、兄さん」
「さて、渡すものがもうひとつ。旅の資金として、これをどうぞ」
 えっ、まだあるの? しかもお金? わあ、さすがキノじい。姫の事となると、心配でたまらないんだね。姫は、なんだか迷惑そうにしてたみたいだけど……。
 キノじいが懐から、ずっしり重そうなコイン袋を、兄さんに手渡した。
「ひーふーみー……うわ、100コイン!? こんなにいいのかよ」
「もちろんですとも、他ならぬ姫様のためですからな。……おや、ルイージ殿。ルイージ殿もマメーリア王国へ行くのですかな?」
「えっ?」
 うーん……
 本音を言えば、僕も一緒に付いて行きたいんだけれど。
 あんまり戦い慣れてないし、兄さんに迷惑かけたくないしなあ。……ちょっぴり怖い、っていうのもあるんだけどね。
「いえ、僕は見送りです」
「おお、ならばジイと一緒ですな。マリオ殿! 先に行って、カメジェットの前で待っておりますぞ」
「ああ」
 兄さんに頷き返して、キノじいは滑走路のほうに向かって歩き出す。
「元気なじいさんだよなあ。姫の事となると余計にさ」
「それほど心配してるんだよ」
「そいつは俺だって同じだよ。こっちは心配しなくていいから、留守番しっかりな」
「うん」
 大きく僕は頷いた。

「マリオー!!」
 滑走路の上に、どーんと陣取るカメジェット。
 デッキのほうから、クッパの怒鳴り声が聞こえる。……もしかして、すっごく怒ってる?
「遅い!! 何してたんだ!!」
「仕方ないだろー、広場でキノピオたちに落し物探すの頼まれたりしててさぁー!!」
 兄さんが怒鳴り返す。僕が待ってる間、そんなことしてたんだあ。兄さんらしいや。
「出発するぞ! 早く乗れ!」
「あー、はいはい」
 兄さんが、地面を蹴ってデッキに軽々と飛び乗った。
 さっすが。このジャンプを見て僕たちだと分からない人はいないってぐらい、僕たちのジャンプは有名だからなあ。ジャンプ力だけなら僕でも結構あるんだけど、フォーメーションとかパワーは兄さんのほうが凄いや。
「どうだ、凄いだろう! これが我輩の最新兵器、カメジェットだ!!」
「んー、まあな。……実際こいつと戦うのは勘弁したいが」
「ウム」
 兄さん、それって褒めてるの……?
 でも、クッパは満足そうに頷いてる。う、嬉しいんだ……。
 やがてクッパは顔を上げて、お腹にずんと響くぐらいの大声で、号令をかけたんだ。
「あとは我輩の手下の……クッパ軍団、集合!!」
 あ、そろそろ離陸するのかな? 兄さん、行ってらっしゃーい。僕は帽子をとって、兄さんたちに見えるようにぱたぱたと振った。
 ……あれ、来ない。僕たちより先に来てたノコノコが一人いるだけだ。
 迷ってるのかな? この城、広いんだよね。僕も初めて来たときは……。
「んがー、どこ行ったー!! ……ん? ひょっとして、お前はクッパ軍団に入れて欲しいのか?」
「……え。マジ?」
 兄さんが固まってる。そりゃそうだよねえ、そんな奴一体どこに……
「そうかそうか! そんなに連れて行って欲しいのか!」
 満面の笑みを浮かべてる。帽子を振ってる僕に向かって……
 え? ……あれ?
「……僕?」
「そうだ! お前だ!」
 慌ててぶるぶると首を横に振った。僕、ただ見送りに来ただけなのにー!
「ガハハハ、遠慮はいらん! 足を引っ張りそうだが、特別に連れて行ってやる!」
 遠慮なんかしてないってばー!!
 これ、逃げたほうがいいよね……? ……それっ!!
「こらー、待てー!!」
 後ろからの怒鳴り声に聞こえないふりをして、僕は城門目がけて一気に駆けだした!
 ……そしたら、同じようにこっちに向かって走ってくる団体を見つけて。
「うわあ!!」
「クッパ様! 軍団ただいま到着しました!」
 そのまま、思いっきり正面衝突して。あえなく、元いた場所にはじき返されてしまったんだ。
「おーい、集合場所はこっちだぞー!!」
 先頭に立っていたノコノコに呼ばれて、他の軍団員たちがどんどん集まっていく。広場が軍団員でごったがえして、もう大騒ぎ。
 ……どさくさに紛れて、逃げられるかな?
 と思ってたら……わー、カメジェットが追っかけてくるー!!
 空飛ぶ戦艦相手じゃ、流石に競争には勝てない。
 伸びてきたマジックハンドに捕まって、僕はあっという間にカメジェットの中に押し込められてしまったんだ。

 あーあ、いったい何でこうなっちゃったんだろう。僕が悪いのかな?
 ……でも。
 今度は兄さんと一緒に、見知らぬ国をあちこち旅できる。
 そう思うと……

 ちょっとだけ嬉しい、かな?

 

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